シュトゥルクリ
“シュトゥルクリ[štrukli]”、はクロアチア北部のザゴリェ地方や隣国スロヴェニアにかけての地域に伝わるパイに似た料理です。
地域や家庭によって様々なヴァリエーションがありますが、発祥とされるザゴリェ地方の基本のものはチーズを薄く伸ばした生地に巻いて焼いたものです(写真参照)。
庶民の間で伝えられてきた料理で、民謡の中で歌われていたり、ハレの日にも普段の食卓にものぼる、とても身近で誰からも愛されているシュトゥルクリは、100年以上前からほとんど変わらない調理法で今でも各家庭でよく作られています。
近年ではシュトゥルクリヤダ[Štruklijada](日本語でいえば「シュトゥルクリ祭り」)といったイベントも年1回開催されているほか、基本のザゴリェ地方のシュトゥルクリは、クロアチアの文化遺産として登録され、クロアチア北部の地域やザグレブ近郊に暮らす人々以外にも、その存在を知られるようになってきました。
中東からクロアチアやボスニア経由で広まったウィーン菓子として知られている、シュトゥルーデル[strudel]とも名前も調理法もよく似ていますが、クロアチア語ではシュトゥルーデルはシュトゥルドラ[štrudla]と呼ばれ、このシュトゥルクリとは区別されています。
シュトゥルクリには、塩などで味付けた食事用のものと、甘く味つけたデザートとしてのものがあるほか、調理法にも2種類あり、「焼きシュトゥルクリ[pečeni štrukli]」と「茹でシュトゥルクリ[kuhani štrukli]」が存在します。焼いたものはパイや春巻きに近いものですが、茹でたものはスープの具材として供されることもあり、食感はイタリア料理のラザニアや、中華料理の水餃子やワンタンにもどこか似ています。
具材はチーズのほか、胡桃やケシの実、カブを一緒に巻き込んだのものが一般的ですが、季節の野菜やフルーツを巻き込んだり、ヨーグルトに似た発酵クリーム、キセラ・ヴルフニャ[kisela vrhnja]を添えたりと、各家庭で楽しみながらアレンジを加えることができるのも、その魅力のひとつです。