コラム・豆知識

スプリト生まれの作曲家、フランツ・フォン・スッペ

無観客で開催されたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 による、2021年のニューイヤーコンサートの、第一部と第二部の幕開けを飾ったのは、フランツ・フォン・スッペ[Franz von Suppè]の曲でした。

コンサートの冒頭、第一部の「ファティニッツァ・マーチ」として知られる行進曲は、国際的に成功をおさめ、多くの翻訳版(バダリッチによるクロアチア語版も)が上演された、クリミア戦争下のトルコ・バルカンを舞台とするオペレッタ『ファティニッツア(Fatinitza)』の一曲で、ニューイヤーコンサートでは史上初めて演奏されました。第二部の冒頭のオペレッタ『詩人と農夫(Dichter und Bauer)』の「序曲」は、とりわけチェロで奏でられる甘美なメロディが印象的な名曲です。

スッペは今のクロアチアのスプリト[Split]に生まれ、幼少期を過ごしたザダル[Zadar]で音楽を学び、その後クロアチアを離れ、各地で指揮者を務めるなどした後、オーストリアのウィーンで生涯を終えました(写真はウィーン中央墓地にあるスッペの墓)。彼は民族的にはクロアチア人ではありませんでしたが、ふるさとダルマチアに捧ぐミサ曲『Missa Dalmatica(ミサ・ダルマディカ)』を残すとともに、生涯に渡りダルマチアを度々訪れました。

フヴァル島[Otok Hvar]で起きた実際のできごとをもとに創られたとされるオペレッタ『Des Matrosen Heimkehr(水夫の帰国)』(この作品はドイツ・ハンブルグでの初演後しばらく忘れ去られていましたが、戦争で失われた元のスコアをアメリカで保存されていたアーカイブをもとにクロアチアで復元されて、スプリトおよびリエカ[Rijeka]において上演されています)などにおいて、ダルマチアの民謡のハーモニーも取り入れられています。

なお、コンサートの詳細や、世界中で話題になった指揮者リッカルド・ムーティの挨拶について知りたい方、そして、聴き逃したというみなさまは以下のリンクをご参照ください。

リンク:視聴率54%を記録!音楽が伝える強力なメッセージを伝えたウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート、本日デジタル配信スタート (2021年1月8日)」ニューイヤー・コンサート(株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント)